ここから感想です

着いてみると、人は二〜三十人といったところでやや拍子抜けしましたが
白髪頭の上品な京言葉を話す爺さんがイッパイでなにやら昔の映画の話に花を咲かせています。
その光景に、心の中にちっちゃな大漁旗がはためきました(笑)
(後で分かった事ですがこの方達は昔、映画作りに関わってきたみなさんのようであります)
…いや、そういうの目当てで来た訳じゃないから。
始まる時間になると、大分席が埋まりましたが、ギリギリ出来ても十分入れたようですね。必死こいて自転車こがなくてもよかったかなあ。

一本目が「戦国時代」。
笑うとこじゃないんだけど、なぜか期待で笑みが浮かんでしまいました。
いや しかし 面白かった!
戦国時代の映画っていうと、どうしても史実にそった 大河モノが思い浮かびますが
フィクションで描くとホントに面白い舞台なのねー
多分もう上映の機会って殆んどないだろうからべたーっと感想と言うかあらすじと言うか。
とある武将、結城家のお城が祝勝にわく所を股野弾正という武将に襲われ、殿は死に、姫は捕らえられてしまいます。結城の家来の一人、矢島は結城の殿の首を持って股野のもとにやって来ます。その心を確かめようと、股野は捕らえた結城の家臣を切り殺させ、姫を俣野のものになるよう説得させます。姫の心は変わりませんが、矢島はその振る舞いから俣野の家臣となりました。姫に裏切り者と言われつつ。
また、城の外には結城の残党がおり 中の何者かと連絡を取り合い、囚われの姫を救出する事に成功します。
ここでイケメン家臣望月(月形龍之介)やその妹などが活躍して姫を救いますが、この妹が馬にまたがってアクション華々しいです。
一方股野の城内では、突然現れたナゾの影武者(今、影武者というと主君の身代わりと言うイメージですがここでは、覆面の忍者みたいな?敵を指しています)に騒然。ってこの時点で矢島イコールナゾの味方だというのは何となく分かるのですが本当に明らかになるのは物語のラスト。
しかし、逃げる途中で姫と家来の妹は野武士に囲まれ、「へっへっへ上玉だぜ〜」の展開に。股野の追手もやってきて、哀れ家来の妹(名前忘れちゃったから回りくどくってすいません)は、斬り殺されてしまいます。危うし姫。
姫はゴリラが人間のコスプレしてるような野武士の集団に担ぎ上げられてアジトに連れ込まれてしまいます。
マジで危うし。
そこに、一人のヘンな女がへらへらと近づいてきます。
その女、野武士が何度も追い払おうとしているにもかかわらず居ついている狂女。
ジャマすんなオマエは、などと野武士達がじゃけんに追い払おうとしている隙に、姫は岩を登り脱出。気付いた野武士も後を追いますが、何処からか先回りしていた狂女に水をかけられて、行く手を阻まれ姫を逃がしてしまいます。
助けてくれたその狂女、実は、姫に仕えていた桔梗という名の美しい腰元、野武士のアジトに居ついていたのは世を忍ぶ仮の姿。
すんごい忍び方。脱帽です。
かくして姫は結城の残党とともに、許婚の、澤なんとかの守(また名前忘れましたよ)の城に逃れたのでした。
で、この桔梗、本来の侍女の姿になりますとふっくらとしたカワイイ娘で、澤の家臣の一人が言い寄ってきたりしますが風体の粗野な感じが今後ろくでもない役回りとなる人物だと予見できるわけです。
やがて股野はこの澤の城にも攻撃をしかけてまいります。結城の軍も加わり抗戦しますが戦局は強大な股野側に有利な展開。
そこで桔梗はピーンと閃き、「あの野武士を使おう」と一人城を後にします。
ところがその後をちょっかい出してきた武士に追いかけられますが、桔梗は、その下心アリアリな態度に断固拒絶の姿勢、しまいには、しつこい奴めと川に落としてしまいます。
野武士のアジトにたどり着いた桔梗は奴らをたたき起こし、なんと本領家の使い(天皇に仕える役人ですかね )に扮して、公家の武人姿も凛々しく股野の城に現れます。
即刻、結城、澤とのいさかいをやめなはれ というお上よりの書状を渡しますと、股野はまんまとだまされ、しぶしぶ承知します。
うまくいったと帰るところで折悪しく、あのいい寄って来ていた家臣が俣野の侍に捕まって引き立てられるところに遭遇。
桔梗の変装は見破られ作戦は失敗してしまいます。
その後、桔梗は果敢に敵と戦いますが雪の中、あえなく命を落としてしまいます。
この最期のシーンに助けに来たイケメン家臣望月、雪と血にまみれた瀕死の桔梗を後ろから抱きかかえ、何とも美しく盛り上がるいいシーンですが そんな二人の間になにかあったという描写はそこまで一切なく、一応表は「姫様を、結城家をたのみます」といった忠実な家臣二人のシーンなのですが。観客の想像にお任せするということでしょうか。…よござんす。思い切り想像(妄想)させていただきます。
…妹も桔梗も死んでしまうとは、望月さんの運命は泣けますね。扮するところの二枚目俳優月形龍之介を目当ての客も多かったのでしょう。きっと観客は誰ともくっついて欲しくなかったに違いなく、暗に描かれる悲恋風味に酔っていたのではと推察。
脱線。
この桔梗の死後、股野の城に攻め込む軍勢、城内で暗躍するナゾの影武者、
瓦屋根の上で影武者を追いかける侍の群れは、何人かつるるーっと滑ったりして、笑いを誘い、この場の主役影武者は信じられない高さをひらりと飛び降り観客(ワシ)は興奮の坩堝。
てな具合に物語は男性的アクションの渦となって、最後には天守閣に逃げ込む股野が待ち伏せていた結城の残党に囲まれ、自分の強い味方だったはずの矢島が実は結城を裏切ったりしていなかった事を知り、自害するという結末。


これでも端折りました。サイレントのクセに90分という長さなのですよ!
しかしアノ、こんなへたくそなあらすじ説明ではわかんないと思います申し訳ないです。
しかし面白かったです予想外の展開の連続で。 あーでもやっぱり女性は死んで花を添える役回りなんだよなー。どんなにパワフルな立ち回りでわかせても、最後は散ってしまうのねー。お約束。
姫は死なないけどね。

矢島もなかなか面白い役回りでした。主君の首を手土産に敵に下るとか敵に自分を信用してもらう為に味方を大勢殺したり覆面姿で大活躍したりと。「覆面の怪人」とかなんとかいう別タイトルで、戦後は上映されていたということで、はっきり言って主役でした矢島。しかしわしは桔梗が面白かったなー。ちょっと藤山直美風味でした。赤玉ワインの広告の美女ぽいと言った方がよいですかね!失礼。でも狂女のシーンから腰元姿、野武士を従えた凛々しい公家の武人とこちらの変身ッぷり演技も含めて楽しかったのでした。

しかしあのむさくるしい野武士たちは、どうして桔梗の言うことおとなしく聞いて、本領家の使いのお供の役やることにしたんだろう…。というとこもちょっと面白い。


もう一本の「人斬り伊太郎」は 短い作品ですが、やはり面白かったです。
伊太郎ってどうしよーもないワルなんですよ。
なのに、最後の最後で、
振ったはずの女が惚れた一心で自分を守ろうとして命を落とすと、そこで惚れ直したらしく
「俺は殺されるんじゃねえ、惚れた女とお手手つないで三途の川を渡るんだ
どうだ、うらやましいか!」
自刃し女の骸に縋り寄って死んでいくのですね。お役人も、「アイツは悪いやつだがこのまま死なせてやろう」と絶命を見守るのですね。
…うわあ。
活動写真って、芝居なんですよねえ…。


こういう古い映画に夢中になれるのも真に迫る勢いを作る生演奏と弁士の熱弁あればこそ かもしれません。
弁士が女性の方なのですが 普通にお話をされるときはとてもかわいらしい声なのに、いざ映画の語りが始まると、なんとも迫力のある流れるような活弁っぷり。
浅香光代さんみたいー と映画の画面からしばしば語り姿に目をやっておりました。
どっちも見たいので困りました。


企画を進めておられる先生、女性でまだお若い。古い映画を保存していき、製作風景や映画に関わる人たちの話などまで、まるごと残していこうとされるのは大変な作業だろうなあと思います。ものすごーく研究熱心なのだろうなあ〜。